信治さんの「上五の体言止」という記事が興味深い↓
http://uedas.blog38.fc2.com/blog-entry-51.html 言い換えれば、上五が名詞(節)の場合、 その末尾で切って読むか(A)、 主語(あるいは目的語)として(助詞を補って)読むか(B) という問題。これは句を捻るときも句を読むときも、きわめて現実的で頻繁に持ち上がる問題。 信治さんの例句を用いて、ひつこく噛み砕けば… 百日紅ごくごく水をのむばかり(波郷) A 百日紅/ごくごく水をのむばかり B 百日紅(は)ごくごく水をのむばかり 鰯雲ひろがりひろがり創痛む(波郷) A 鰯雲/ひろがりひろがり創痛む B 鰯雲(が)ひろがりひろがり創痛む プラタナス夜もみどりなる夏は来ぬ(波郷) A プラタナス/夜もみどりなる夏は来ぬ B プラタナス夜もみどりなる/夏は来ぬ ※Bは前半倒置⇒夜もみどりなるプラタナス それぞれA、B、Bが順当な読み方だろう(波郷はどうも確信犯的に両掛かりを匂わせているフシも見えるが、それはさておく)。ところが意地悪くB、A、Aと読んで、「百日紅が水を飲みますか」「手術の傷がひろがったら大変だ」とか言い出す人。これ、いますねえ。卑近な句会でも、よく耳にしますねえ。 例えば「や」など、明白な切れ字を用いない場合(それでも、「や」で切れていながら主語になっているような句は多いが、それはさておき)、形式上、どうしても2通りの構造、2通りの読みを持ってしまうことが少なくない。 さて、それで、どうするか? 読むときは、私の場合、はっきりしている。いいほうを選択する。読んで気持ちいいほう、面白いほうで読ませていただく。 つまり、百日紅がごくごく水を飲むほうが、句として面白いなら、そう読む。作者の作句上の意図をなるべく汲むようにはするが、「結果よし」のほうで、読ませていただく。だから、別の読み方をされてしまう「疵」があっても、片方の読み方で「誠に宜しい句」なら、迷わず、片方で読ませていただく。 もちろん、句会などで、「切れがどちらともとれるのは問題かも」とコメントはするが、それは句評の主眼ではない。あくまで副次的な話題。「うるさいこと言う人がいるから、直るなら直したほうがいいかも」という程度。句会でそういう感想(考え方)を交換するのは悪いことではないと思うから、そういう(退屈に)形式的なことも口に出したりはする。それを聞いて、句を作った人が、「カタチのうえでの切れをはっきりさせたい」と思ったら推敲するだろうし、「そのままでいいか」と思ったらそのままだろう。 一方、句を捻るときは、どうだろう? これについてはいつも迷う。 「鰯雲ひろがりひろがり創痛む」は凡人なら、助詞が補えるように「鯖雲がひろがりひろがり創痛む」なんてやってしまうところだ(鰯雲と鯖雲は、5音で座五に置くか、4音で助詞をくっつけるかの区別で使い分けられているのが実際のところだろう。俳句におけるこの音数問題は意外に大きい。二月を二ン月とか、ね)。 切って読まれたくないから、わざわざ4音を探してきて助詞をくっつける、あるいは逆に、切って読んでもらいたいから、わざわざ4音を探してきて「や」をくっつける。言うなれば「上五の4音+1音処理」。 これで、まあ安心するわけだ。というのは、「百日紅が水を飲みますか?」なんていう科白を聞かなくて済むという意味の安心なのだが、考えてみると、こんな意味の「安心」というのは、ひどくつまらないものだ。形式として「ちゃんとしていること」が、それほど大事なのかと、ケツをまくりたくなってくる(このあたりの「気持ち」は信治さんに近いのかな?)。「読んで気持ちいいほうで読んでください」という態度で句を捻り、読むほうは「読んで気持ちいいほうで読みますね」という受け答え。それで何か問題が生じるとは思えない。 厳格と寛容。後者のほうが幸せになれると、私は信じている。ところが、俳句に慣れてくると(俳句のアクが身につくと)、「厳格な(末梢的形式にこだわる)読者」にも対応してしまうのだ。ガタガタ言わせるのがイヤというだけなのだが、考えてみれば製造者責任(PL)を自分の句作に持ち込むなんて、馬鹿げている。もっと無責任に句を捻ることにしようと思う。 ▲
by tenki00
| 2006-04-29 19:02
| haiku
連休に寿司屋に行く人も多いでしょう。ご参考までに↓(8分07秒・音声ONで)
http://www.youtube.com/watch?v=JYJRG7GjcvM&search=Japanese%20tradition 無法動画サイト YouTube は近いうちに見られなくなるかもしれないので、今のうちに。 ▲
by tenki00
| 2006-04-29 12:55
| pastime
立夏のあたりに、「100題100句・夏の別館」を開設いたします。
現在進行中の「100題100句」とは別の100題を用意します。 投句その他の手順は「100題100句」と同様です。 新しく参加される方は、「100題100句」でも「100題100句・夏の別館」でもどちらでもかまいません。お好きな方へご参加ください。 ただし「100題100句」を疾走中の方は、「100題100句・夏の別館」への同時参加はご遠慮ください。「100題100句」を走り終えてからの出走でお願いいたします。 サイトアドレスその他は、開設の折りに、この掲示板、また「100題100句」サイト、ブログ「俳句的日常」などでお知らせいたします。 ▲
by tenki00
| 2006-04-28 23:58
| haiku
麦の会の「収穫祭」(未発表句30句出し)の〆切が今月の末なので、準備するかと、メモ帳(句帳)やらファイルやらから句を引っ張り出して並べる。そのプリントアウトを昼休みに眺めていると、アルバイトさんが覗き込む。お弁当のおかずを隠すような真似をしてもしかたないので、見せてさしあげる。
梟はどこへのせたらよいのやら 鼬からそこのところはよろしくと しろながすくぢらのやうな人でした ややこしくなつたら鶴が割つて入る ずらずら並んだ句のなかから、こうした句に、きゃっきゃとウケてくれる。このひと、動物が好きなのか? それにしても、こちらの期待の数倍の反応だ。つねづね、俳句をたしなまない人たちを最上の読者とすると公言しているのだから、こういうシロウトにただただ笑ってもらえる句こそ、かわいがってやらねばいけない。 でもね、こんな句、投句できるわけがない。何十年も俳句をやってきた審査員のセンセ様方(クロウト)にお見せできるような代物ではない。こーゆーのはどけておいて、とりあえず30句を選ぶ。 ざっと眺める。「いちおう俳句みたいな俳句」が30句並んだ。で、投句するか? 見送るか? ちょっと悩んでみることにする。 ふうむ。 ところで、春に収穫祭? これはちょっとヘン。 ▲
by tenki00
| 2006-04-28 23:40
| haiku
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by tenki00
| 2006-04-26 13:52
| pastime
急遽決定。
2006年4月30日(日) 14:00 JR国立駅南口集合 題詠てきとう。悪魔のように句を捻り、お時間のあります方は、悪魔のように飲み且つ喰って帰っていただく、いつもの句会です(今月は変則になって2回目)。連休のさなかです。ご無理なきよう。参加いただける方は天気までご一報いただければ幸い。 すこしのあいだトップ位置に置きます。最新記事はひとつ下↓ ▲
by tenki00
| 2006-04-26 11:33
| haiku
弟のところに荷物を送る。「もんじゃ焼きの素」(粉末・袋入り)。ずいぶん前になるが、弟夫婦が東京にやってきたとき、弟の嫁が月島でもんじゃ焼きを食べたがっていた。ところが都合で別の食事になってしまい、食べ損ねた。なので、yuki氏が買っておいた。
箱に入れると空きがあったので、交通違反に関するノウハウ本(以前につくった本)を入れた。弟は、交通違反で捕まるたびに警官とやりあうという。「納得いかない!」というわけだ。語気は荒い。関西のオッサンそのものである。おまけにそこそこ理屈っぽい。一度はパトカーの中で道路の絵まで書いて、その取り締まりがいかに不合理かを警官に説明したらしい。変なヤツ。警官はおとなしく聞いていたという。ごくろうさん。最後は、やっぱりキップを切られるわけだが、「こっちは忙しいんじゃ。切るんなら、はよ、切れ!」と捨て台詞。忙しいのなら相手にならなければいいのにと、私などは思うが、そのへんは性分なのだろう。変なヤツ。それで、交通違反本を入れてあげる。警官とのコミュニケーションで役立つことがあるかもしれない。 ところで、改正道路交通法でこの4月から、駐車違反取り締まりが部分的に民間委託された。2007年問題(団塊世代の大量退職)対策?と疑ってしまう。まだ地域限定(都12区)らしいが、広がればややこしいことになると思うなあ。ただでさえ、駐車違反取り締まりは、妙だもの。 ▲
by tenki00
| 2006-04-26 00:19
| pastime
第90回。もうそんなになるんですね。私もがんばって3句捻りましょう。
http://8620.teacup.com/mugi0000/bbs 吾郎さん、お当番、ご苦労様です。 皆様、お気軽に、奮って御参加くださいませ。 ▲
by tenki00
| 2006-04-25 09:30
| haiku
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by tenki00
| 2006-04-24 15:43
| kasen
![]() 同人作品集(10句)のほか記事いろいろ。 豆の木さんでは、作品集に載せる顔写真に、毎号、企画がある。今年は「中学時代の写真」。おじさん・おばさんにも、こんな頃があったのね、と、いう感じ。俳句そっちのけで、女流俳人の「失われた時」に思いをはせ(過ぎ)る「昔の写真(略してムカシャ)マニア」も出現している(例:葉月さん)。 ともあれ、私からお譲りできる分が7冊ある。ご希望の方は連絡ください。先着順。第2回配本入荷(2006-4-20) 興味のある方はご遠慮なく。よろしく。関連記事はこちら。 ▲
by tenki00
| 2006-04-22 23:30
| haiku
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