映画論煮凝りに箸沈めつつ 太田うさぎ
太田うさぎ「あをあをと」30句(
週刊俳句・第85号)より。
小料理屋かどこかで映画の話になるという情景。あっさりとオツな句。だが、映画館の、あの闇と、スクリーンの光、水面のようにどこまでも表面的な光を思うとき、それらが煮凝りの質感へと繋がり、また別の感興を催す。
四角く柔らかく設えられた闇と、そこにある光のことを、私たちは映画と呼んだり、煮凝りと呼んだりする。
(「煮凝り」と呼ぶのは、ちょっと無理があるけれど、この句以降は、そう呼んでしまうことにする)
柔らかい肌(1964)