冬空やサンドヰッチのしつとりと 田中裕明
食パンの耳をとって、ハムや卵をはさみ、それから濡れナプキンをかぶせて、重石がわりにまな板を載せる。むかし母親つくってくれたサンドイッチはそうだったから、パンはしっとりと湿っていた。
いまは食パンなどを使わず、なんだか洒落たサンドイッチも多いようだけれど、外で食べるときは、伝統的なサンドイッチ。ルノアールとかシャノアールとか、メジャーなのかマイナーなのか判然としないチェーン系喫茶店、あるいは歴史に取り残されたような純喫茶にしか残っていない伝統的なサンドイッチを、昼、あまり知らない町に仕事などでひとりいるとき、たまに食べる。
それほどしっとりとはしていないが、きちんと白い食パン。きちんと三角に切ってある。サンドイッチはこうでなくてはいけない。