母の日や紐を手繰ればずるずると 苑を
母の日まで取っておきたい句だが、この俳句漫遊記は当季にこだわっていない。
手繰った紐の先には? まあ、何もないというオチが多い。この行為はどうしても出自を想起させ、母の日とは付く。だが付いて悪いことはない。
とぼけた味わい。だが、一方で、なんとも怖いような。しかし手繰ってみずにはいられない。怖さと向き合ってこそ獲得される優しさが温かさがあるし、ね。
嗚呼、母よ! 嗚呼、今生を生きるということよ! それは、こんなにもオトボケな、こんなにも怖ろしいことなのだ。
『月天』第9号(06-12-2)所収。