中学生の頃、姫路には輸入レコード屋がなかった。輸入レコードを買おうと思えば、神戸まで出かけるしかなかった。いつの時代の日本?と思うかもしれないが、実際、そう。
神戸の話は、一昨日のエントリ。それで、こんなこと、つまり輸入レコードのことを思い出したというわけなのだが、神戸・三宮にAOIレコード(アオイレコードと読む。もともと葵だったのか?)という小さな店があった。はじめて輸入レコード(アメリカ盤)を買ったのは、そのAOIレコードだった。で、何を買ったか? これがとんと思い出せない。 邦盤と輸入盤(まあアメリカ盤なわけだが)の違いは、何が違うって、匂いが違うということだ。アメリカ盤は匂いが強く、邦盤はあまり匂いがしない。というよりも、邦盤の匂いは、日本の匂いだから慣れている。慣れていない匂いは、強烈に匂う。 輸入盤を買って、透明シートをぴりぴりっと剥がす。紙ジャケットの開き口をちょこっと開ける。すると、アメリカ盤独特の「匂い」がふわーっと鼻孔に入ってくる。この瞬間がなんとも言えない。アメリカの香りというのは比喩ではなくて、レコードの紙ジャケットの、そしてレコード盤の匂いだった。 だからね、神戸ということで思い出すことのひとつは、まず輸入レコードのあの匂い。それと、AOIレコードに入った瞬間、「何があるんだろう? 何を買おう?」というワクワクドキドキと、私のなかでは切り離せないのだ。オカネはないから、買うのは1枚きり。それを買って帰って、包装を破り、そのとき匂ってくる匂い。それがねえ、なんとも……。 いけない。繰り返しになっている。このあたりで、今日の10句。100題100句・夏の別館もちょっと進まなければ。ということで、そこからの10句ざんす。 星を恋ひ灰掻棒の立て置かる あめを(以下同) 遠泳のひとかき空の傾きぬ 噴火口覗くがごとく夏痩す 英虞湾に南瓜の浮かぶ暑さかな 煙突のみ残る真夏の火事の跡 銅像の背筋のぴんと夏蝶来 夏木立キリンの始祖と思しきが ががんぼのよろめく松の廊下かな エンパイアステートビルの右に蝉 沈丁の匂へる星の暗さかな
by tenki00
| 2006-07-28 23:03
| pastime
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