遠足の別々にゐる双子かな 岡田由季
句集「ツインズ」(炎環新鋭叢書3『環座』2003所収)より。 「ツインズ」を頂戴したのはずいぶん前。収められた句を気持ちよく拝読した。句の感触はやわらかく、乾いてもいる。乾いているが、温かい。また抑制の効かせ方が知性的。 そうした作者の特質(美点)とは別に、モチーフの選択に惹かれた。ある時代(私には近しい時代)の家族、そしてそれが置かれる「20世紀的事物」が興味深く、また気持ちよく配置される。そこに作為を感じさせない。作者が俳句と自然なかたちで付き合えている証拠のように思える。俳句との自然な関係。これは、口で言うのは簡単だが、実はたいへんなことなのだ。 たとえば、「いったいいつの時代に、いったいどんなところで詠んだのだ?」という句は多い(良い悪いは別にして19世紀でも”りっぱ”に通用する句が、今も大量に生み出される)。「ツインズ」に、それはない。「日常」が、身辺・卑近という意味でなく、文脈(コンテクスト)として働いている。 言い換えれば、由季さんの目の前にあるもの(あるべきもの)が自然に俳句になっているという印象だ。そしてこの日常は、爽やかに都会的である。「家族」を扱いながら、まったくべとつくところがない(嫌な湿気がない)のは、そのへんも関係するのだろう。 こどもの日すぐ裏返る傘のあり 岡田由季(以下同) 自動ドア開くたび散る熱帯魚 父と子が母のこと言ふプールかな 間取り図のコピーのコピー小鳥来る 運動会静かな廊下歩きをり 空港は窓ばかりなりクリスマス 人日やどちらか眠るまで話す 追記1 岡田由季さんのブログはこちら⇒http://blog.zaq.ne.jp/blenheim/ 追記2 炎環新鋭叢書は合同句集。第1巻から第3巻(私が持っているのはこの3冊)までそれぞれ5人の若手(?)作家の作品が収められている。炎環という結社は若手を大事にする結社なんですね。石寒太先生の度量かな。
by tenki00
| 2006-07-04 12:11
| haiku-manyuuki
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