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観くらべ 第15番 お告げ

予約したDVDをTSUTAYAが2本ずつ郵送で送ってくれるサービス。その2本に勝ち負けを付けるという、ヘンテコリンなシリーズの第15弾。

トゥルー・ロマンス トニー・スコット監督/1993年



スーパー! ジェームズ・ガン監督/2011年


郵送してくる2本の組み合わせは偶然でしかないのですが(予約するときに同監督など関連を持たせることはたまにある)、うまいこと、2本に共通項があったりする。今回は、お告げ。

平凡な主人公がガラっと変身するきっかけが、前者はエルヴィス・プレスリーの、後者は神のお告げになっている。

『トゥルー・ロマンス』は、クエンティン・タランティーノ脚本。・プレスリー好き、アクション映画好きのアンちゃんが、新米売春婦の可愛い女の子をナンパ、元締めのポン引き(ゲイリー・オールドマン!)を懲らしめに行ったところが殺してしまい……ということで、二人で逃避行、ギャングに殺されそうになるわ、実際、父親は殺されちまうわで、えらいことになってしまう。

『スーパー!』は冴えない男がスーパーヒーローのコスチュームに身を包み、手当たり次第に悪を懲らしめにかかる。あるとき自分が「神に選ばれし者」という想念に取り憑かれての行動なのだが、超能力も能力もないので、スパナで殴るなど、ふつうの、ちょっと陰湿めの暴力です。妻(元ヤク中)を救うという目的というか大筋はあるが、要は、コスプレのヘンな男が大暴れしているということ。

で、です。どちらもバカ映画の範疇ですが、『トゥルー・ロマンス』には、ドタバタとした展開のなかに、奇妙に虚無的な味があるんですね。死や暴力にまつわる虚無? ちょっとしたヒリヒリがある。

「可愛い女の子のためなら、なんだってやっちゃうよ」という男のバカさもまたヒリヒリ感の一部を担い、ここが青春映画的でもある。また、脇役が充実で(デニス・ホッパー、クリストファー・ウォーケン、ブレーク直前のブラッド・ピットなど)、見せ場もいくつか。

一方の『スーパー!』は、んんん、難解です。微妙です。

観た人の評判はいいようですが、どこを楽しめばいいのか、ひじょうに難しい。主人公には「おまえ、アタマ、おかしいだろ?」「もうやめとけ」と言いたくなります。映画全体が、キリスト教的(宗教的)善悪への皮肉・カリカチュア? 平凡/非凡という観念への皮肉? よくわかりません。「人生とはつまり絶望的にどーしようもない」ということなら、いい映画かも。それにしたって、後味は悪い。

憧れのヒーローをリアルでやっちゃったら…という設定ですから、『キック・アス』(≫過去記事と比較してしまう映画でもあります。深浅でいえば、『キック・アス』は浅く、この『スーパー!』は深いかも。前者は単調にウソっぽい、後者はザラっとして機微がある。けれども、『キック・アス』は観ていて気持よく、『スーパー!』は、ちょと関わりたくない感じがしてしまう。

というわけで、『トゥルー・ロマンス』の勝ち。


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by tenki00 | 2012-07-12 18:00 | pastime
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