緞通に大きな靴の跡ありぬ 高浜虚子
緞通、絨緞は冬の季語とされる。わからないことはありませんが、かなりムリクリです。「そんなの、季語といえるのか?」と言う人には、「そうですよね」と答え、「いやいや、りっぱに季語(季題)だよ」と言う人にも、「そうですよね」と、私は答えるだろう。要するに、どっちでもいいのだ。
絨毯を深々と刺すハイヒール 竹岡一郎
深々だから一般家庭にあるのとはモノが違う。いやそれより、靴履きという点で、すでに御家庭ではない。ホテルかレストラン、それもかなり豪華な。
ハイヒールは、高くて細いやつ。映画でしか見ないようなやつ。じゃないと刺さらない。履き主は、もう、それは、美人、と相場が決まっている。
微視的に一点にピントを合わせながら、その場の空気や気分を伝える。これって、俳句のひとつの醍醐味なわけです。
●
ハイヒールの句は
『蜂の巣マシンガン』(2011年8月・ふらんす堂)より。
他に何句か。
船乗にいそぎんちやくのそよぎけり
抱卵期見世物小屋に風が吹く
落下傘秋草の野に畳みけり
●