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夜の桃

作者と読者の念頭に、先行句を置くことなしには成立しないケースがある。例えば「夜の桃」というフレーズを含む句は、三鬼の「中年や遠くみのれる夜の桃」の存在を無視することはできない。下敷きにするもの何も、あらかじめ敷かれた下敷きの上に、句を置くしかない。その場合、パロディとなるのか、頌(オード)となるのか、あるいはもっとほかの関係か、それはいろいろだろうが、ともかく、「本歌」との関係を結んでしか存在しえない。

  とりかえしつかぬところに夜の桃  河西志帆

この句、軽いタッチの返歌といった立ち位置だろうか。三鬼の「中年」の切実感、可笑しみのある切実感とは離れ、とりかえしがつかないのに、切実ではない。

掲句は『水を朗読するように』(邑書林2008年12月)所収。



by tenki00 | 2010-10-23 19:00 | haiku
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