特別寄稿 こないだのチャンピオンズリーグ決勝

たーけだ君からメールが来た。メールなのに原稿みたいだから、ここに「特別寄稿」ということで載せてしまう。許可はとったので、そのへんはだいじょぶ。

サッカーエルビス・コステロの話である。

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ところで。こないだのチャンピオンズリーグ決勝、リバプール対ACミランは良い試合でした。

この決勝戦はトルコの首都イスタンブールで行われたのである!

リバプールは、いわゆる古豪と称されるクラブであって、かつての栄光の歴史にもかかわらず、欧州チャンピオンは21年ぶり。国内リーグは、89/90年シーズンで優勝したのが最後、このところは、国内リーグでも、ましてや欧州での選手権であるチャンピオンズリーグなどでも、まったく勝ち進めなかったチームであった。

しかしリバプールにはひとつだけ誇るものがあった。それは、数十年来の歴史によってつちかわれたサポーターたちの存在である。彼らはリバプールを「レッズ」と呼び、どんなときにも声援を送り続けてきたのである。

彼ら、サポーターにはテーマソングがある。
You'll never walk alone。
映画「回転木馬」の挿入歌でもあるが、あえてここは、ジェリー&ペースメーカーズのヒット曲といっておこう。

リバプールサポーターは、試合前、そしてハーフタイム、あるいは試合が劣勢に陥ったときにこの曲を大声で歌う。スタジアムをおおいつくす、その野太い声こそは、フットボールの醍醐味を象徴するものといわれたのである。

さて、ここにエルビス・コステロというアーティストがいる。彼はひとりのロックスターである前に、熱狂的なリバプールサポーターであった。しかしこの2005年に訪れたチャンピオンズ・リーグ決勝の当日、彼はみずからのコンサートを行わねばならなかった。当然のごとく開演は2時間遅らされた。楽屋のテレビで、決勝戦を見るためである。

前半、リバプールのサッカーはまったく精彩を欠き、ACミランによって3ゴールを決められてしまう。イスタンブールのスタジアムの大半を占めたレッズ・サポーターの意気消沈した表情が映し出される。コステロもおそらく、それを見て、首をうなだれていたにちがいない。ハーフタイム、You'll never walk alone の歌声が響いた。そして後半が始まる。リバプールは、うってかわって前半とは見違えるようなサッカーを見せる。なんと後半10分の間に3ゴール。同点においついたのである。

コステロはきっと、ずりおちるめがねを人差し指であげながら、狂喜していたに違いない。

3対3。そのまま試合は延長戦に入る。延長戦は前後半あわせて30分。おそらくここらへんで、コステロ関係者の誰かが、「そろそろコンサート、はじめねえとまずいんじゃない? そもそも2時間遅らしてるわけだし」とか、いったに違いない。もうすでにいい大人であるコステロは、試合の行く末を気にしながらもコンサートを始めたそうだ。

試合は延長戦でも決まらず、PK戦に入った。その情報は楽屋から、逐一、舞台上のコステロに伝えられていたのだろう。コステロは、情報に耳をかしながら、ずりおちるめがねを気にしながら、演奏を続けた。そして、その情報がもたらされた。

PK戦でリバープールは勝った。
21年ぶりの栄光!
その瞬間、コステロはバンドメンバーに合図を送り、ある曲を演奏しはじめた。
You'll never walk alone !

コステロはきっと、ずりおちるめがねを人差し指で上げながら、涙してこの歌を絶唱したに違いない。

コンサートはこうして終了した。

開始が遅れたために終電を逃した観客から、後日、膨大な苦情が寄せられたという。

……という話はご存知でしたでしょうか?

(c)takeda shogo
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by tenki00 | 2005-06-03 16:00 | pastime
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