好き句56 菊田一平

荒海の音のぶつかる白障子  菊田一平

句集『どつどどどどう』のことをなぜ知っていたのかはわからない。このタイトルが耳鳴りのように、記憶の中にあった。だから、豆の木の合宿で、一平さんにはじめてお会いして、「はじめまして」と御挨拶したその次、私が口にした言葉は、「句集ください」だった。初対面の、なんだかわからぬ若造から、こんなことを言われて、一平さんはびっくりされたかもしれない。無礼千万、なにとぞ御容赦。でも、そんなことはおかまいなしに、紙片に自分の住所を書いて、渡した。

送っていただいた『どつどどどどう』はすぐに読んだ。気持ちよく読んだ。御礼の手紙には、しかし感想などは書かず、取り急ぎの御礼のみ、そして『チャーリーさん』、ロビン・ギルさんの「海鼠本」「蝿句本」を同封した。なんのいきさつか、一平さんは、海鼠本のことをご存知だったからだ。

さて、掲句。読んでからずっと今まで耳鳴りのように、私の中で鳴っている。旅情である。荒海、白障子は、やはり日常ではない。旅先で、一平さんがぶつかった空気だろう。あるいは、故郷の景か。故郷もしかしまた旅情のように遠いはずだ。
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by tenki00 | 2005-06-01 19:52 | haiku-manyuuki
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