いよいよ桜ですね

猫髭●こんばんは、シカゴの猫髭です。

天気●遠出のシノギ、お疲れさまです。

猫髭●ところで、長谷川櫂氏がNPO「季語と歳時記の会」立ち上げたの知ってる?

天気●いいえ。

猫髭●毎日新聞の夕刊に出てた。これね↓
http://mainichi.jp/enta/art/news/20080304dde014040032000c.html

季語と歳時記の会:設立、700項目でネット事業開始 季刊誌刊行や山桜の植樹も

高度にすすむ情報社会の中で季節感が失われていく現在だが、俳句の季語や歳時記への関心を深め、季節の言葉に潤いを持たせる目的で「季語と歳時記の会」(代表・長谷川櫂さん)が設立された。NPO法人認可を申請中で、5月には正式認可される。

代表の長谷川さんは俳誌『古志』代表の俳人。句集『松島』のほか評論集『俳句の宇宙』で90年、サントリー学芸賞を受賞、実力俳人として活躍している。俳人や俳句愛好者ばかりでなく、季語や歳時記に興味を持つ人はことのほか多く、そうした人たちの求めに応じるため設立を思い立ったという。

主な事業は、まずインターネット歳時記「季語と歳時記」を運営する。今月1日、約700項目でスタート、09年には5000項目を完備する。利用者は季語の解説と例句を検索できるほか例句と鑑賞文、新季語を自ら登録することができる。つぎに「歳時記学」の構築。このところちょっとした歳時記ブームで、俳句出版社からもつぎつぎ改訂版の歳時記が刊行されている。だが、俳句のための歳時記ばかりでなく、自然、人文、社会学などの分野を含め学際的な研究をすすめる。そのため来年には季刊誌『季語と歳時記』を刊行するほか、講演会、シンポジウム、季語検定、論文・エッセー募集などを行う。

歳時記の普及・研究のほか、もう一つの運動の柱が「山桜100万本植樹計画」だ。いまサクラといえばソメイヨシノ。だが、都市を彩る花ではなく、本来の自然の美しさを保つ山桜に注目する。山桜を通して、自然における季節のめぐりを感受しようというねらい。100万本の植樹を目標に、「山桜基金」を設け一本につき1000円の寄付を募集する。5月18日、同会事務局となる新潟県加茂市の曹洞宗双璧寺で第1回山桜植樹会を行う予定だ。
(以下略)

天気●ふむふむ。冒頭からして、意味、わかりません。「高度にすすむ情報社会の中で季節感が失われていく現在だが」って? 情報社会と季節感と何の関係が?

猫髭●こちらは夏時間が始まったのですが、ミネソタから寒波が来ていて雪が降っています。でも、午後は晴れて根雪以外はすぐ溶ける。五大湖(でかいのでほとんど海だけど)のそばだから天気の変わるのがめまぐるしい。ホテルの窓からは地震があったらほとんどドミノ倒しになるように林立する摩天楼。一番高いのがシアーズ・タワーで百階以上あって高度五百メートルを越える。クラウンプラザというホテルの部屋にはフリーのインターネットに目覚まし付きSONYのCDプレイヤー、LGのハイビジョン対応液晶TVで、窓から夜に入ってちらつく粉雪を見ながら、「高度にすすむ情報社会の中で季節感が失われていく現在」を噛みしめて、いるわきゃないよ。

天気●いないんですかw

猫髭●そんなに紋切り型には出来ておりませぬ。

天気●季節の言葉に潤いを持たせる目的で」も、意味、わかりません。

猫髭●オヘヤ空港からフリーウェイをダウンタウンに向うと、摩天楼が春の雪の中にけぶるように現れる。キングサイズのダブルベッドはトランポリンが出来るほどのでかさで、時差ぼけで服のまま仮眠したりして「季節の言葉に潤いを持たせる」夢を見ていましたが、ホテルのバーで飲んだ家鴨のマークの地ビールが膀胱を圧迫して目が覚め、便器で小便も春の水かと潤いを持たせております。BGMはノラ・ジョーンズのCome away with me。オリジナルのI've got to see you againも痺れる。摩天楼の夜景にはJAZZが似合う。潤いが部屋に出て来ました。

天気●あ、あの、何の話でしたっけ?

猫髭●「設立の目的」のところね。まあ、「インターネット歳時記」をつくってくれるんなら、歳時記を持ち歩かなくてもここにモバイルからアクセスすれば、紙も鉛筆も要らない。現代的な俳句のスタイルができるかも。

天気●ネット上には、つくりかけでほっぽらかしになった歳時記がたくさんありますね。ある程度まとまれば、使う人も出てくるのでしょう。

猫髭●「大型俳句検索」以外に、こういう本格的な季語例句集が出来るとしたら、類想類句のチェックに便利なので、利用させてもらおうと思います。ただ、季語を支配しようという志向が見え隠れしている。季語検定とか、季語認定とか、歳時記学とか。それに山桜の募金植樹運動? 季語検定なんか「きっこの日記」で推定毎日20万人がアクセスして遊んだことがあるけど、「けんてーごっこ」というお遊びならわかるけど、それを権威付けに横滑りさせるような押し付けがましい匂いがする。

天気●20万アクセス? いろんな意味で信じられないw それにしても山桜の植林って、なんだか唐突ですね。「季語と歳時記の会」のホームページ。
http://cgi.geocities.jp/saijiki_09/index.html
植樹のところには、こうあります。

「雪月花」というとおり、桜は季語の中でもっとも重要な季語のひとつです。ところが、先の戦時下では軍国主義の象徴とされ、そのためにいまだに桜にわだかまりを感じている人々がいます。そこで当会では戦争によって損なわれた桜の名誉を回復し、昔のようにすべての日本人が晴々と桜を愛でることができるように、毎年、全国各地で山桜の植樹を行なうことにしました。

桜は軍国主義の象徴だったから、いまだに桜にわだかまりを感じている人々? いないとは言いませんが、問題にするほどいるんでしょうか? そこのところが、どうも実感がないんですよねえ。

猫髭●実感? ないねえ。

天気●そのあとに続く「すべての日本人」というのがまた、凄すぎますw こういうのは注意して使わないと……。

猫髭●そこもそうだが、「桜を愛でる」と植樹の関係がわからん。「昔のようにすべての日本人が晴々と桜を愛でることができるように」とあるが、昔は山桜は家桜と区別されて豊穣の吉凶を占う信仰の対象だったから、一喜一憂であり、晴々といつも愛でていたわけではない。日本人が晴々と愛でる対象にしていたのは萬葉以来梅だよ。だから山桜の句を詠もうというならまだしも、なんで「山桜の植樹」になんのよ。

天気●いや、山桜の句を詠もう運動も要らないw 俳人は、桜が咲けば、ほっといても桜を詠む。もういい!ってほど詠む。やめろって言っても詠む。

猫髭●さなり。それにしても、植樹は関係ないじゃん。まるで、「君が代」にわだかまりを感じている人々に、すべての日本人が「君が代」を晴れ晴れと歌えるように、盆踊のリズムで庶民的に歌えるように、各県に盆踊調「君が代音頭」の作曲といつでも踊れる櫓を建設することにしましたと言ってるのと大して変わらんぞ。

天気●なんだか変な譬えですね。たしかに、「わだかまり」と植樹の繋がりがわかりません。ソメイヨシノの植樹なら、戦後さかんにおこなわれました。ソメイヨシノでは「わだかまり」は解消しない、山桜なら解消する、ということ?

猫髭●なんで植樹なんだろうねえ。それも山桜。高屋窓秋の「ちるさくら海あをければ海へちる」が作者に無断で特攻隊の栄華のオープニングタイトルに使われた事があるけど、山桜だと、もろ本居宣長の「敷島の大和心」を下敷きにしている春の水心が露骨。

天気●まあ、植樹は植樹でいいと思いますけどね。そこに会員の句碑を立てまくって景観を破壊するようなことさえしなければ。

猫髭●やだなあ、鎌倉の谷戸を散歩していると山桜のそこかしこに墓碑のように句碑が建っているのは。思いっきり、俳句のワビサビからずれている気がする。NPOの持つ胡散臭さと押し付けがましさも感じる。

天気●はい、NPO(笑)ですね。一般的な話、「非営利」を謳われると、「あ、営利なんだー」と思ってしまう。これって私がオトナだからでしょうか、ひねくれ者だからでしょうか。で、今回のこれって儲かると思います?

猫髭●フリーペーパーなら面白いし、儲かるかもしれないけど、このチープなホームページ見る限りでは貧乏くさいのでまず儲からない。謳い文句に「歳時記学の構築をめざします」とあるようでは無理。めざすなよ、んなもん。わけのわからんゴタクを沢庵石のように頭に載っけると、権威主義的な匂いがしてくる。

天気●なるほど「沢庵石権威主義」。それにしても、歳時記や季語には、たくさんの先行研究があって、業績の積み重ねがあるんじゃないでしょうか。それとは別に「歳時記学」?

猫髭●「歳時記研究」ではなく「歳時記学」ね。

天気●「研究」よりも「学」のほうが、素人にはとっつきやすいというところがあります。

猫髭●そうかもしれないが、季語の解釈は時代によって変わるから、その積み重ねの中から新しいその時代に合った俳句も生れるわけで、「学」にすると、ひとつの本意で詠まなければ駄目だという押し付けになるような気がする。

天気●新季語を自ら登録することができる」という会員特典も、なんだか凄いです。老人版ヘップバーン歳時記?

猫髭●新季語の任命権まで手中にするか。

天気●どこかの誰かが新しく追加した「新季語」の混じった「インターネット歳時記」って、使いづらそう。でも、まあ、構築を目指す、ということですから、すべては今後ですね。

猫髭●それでは、今回の教訓を述べよ。

天気●いきなりですねえ。ええっと、NPOはあやしい。

猫髭●そこか!

天気●桜は植えても、句碑は植えるな。

猫髭●そこか!

天気●漬物石はアタマに載せるな。

猫髭●それは正しい。肩が凝ると俳句も凝る。

天気●ところで、すぐに桜ですね。その頃には行脚も終わって日本でしょう? お気をつけて帰国なさいませ。

猫髭●はい、ありがと。


〔後日談・猫髭〕シカゴからデンバー行って、それからサンホセ、リバーサイド、サンディエゴと、時計を三回時差戻しながら(ほんとにでかい国だよ)、最後は時差早めて帰国しました。日本はお彼岸なのに凄い春の嵐で、飛行機も乱気流に揉まれに揉まれ、着陸時には生きててよかったと拍手が機内に響き渡りました。でも、鎌倉の谷戸の桜は明日にでも咲きそうなほど莟がピンク色です。
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by tenki00 | 2008-03-22 22:21 | haiku
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