二月某日。上海人夫婦がやっている中華屋さんで昼食。おばちゃんから、この3月で店を閉じて上海に帰るという話を聞かされる。
それがいいです。日本はとうぶん不景気が続くし、中国にはビジネスチャンスがいっぱいだ。
客は私たちだけ。食べ終わってからも、よもやま話が延々続く。
帰国後、おばちゃんとしては、おっちゃんに、食堂経営でも貿易商でも、活躍・飛躍してもらい、自分はのんびり友だちと楽しい時間を過ごしたいらしい。
「オトウサンは、仕事で忙しく、私は、遊びで忙しく」
あはは。でも、遊んでばかりじゃ飽きますよ。せっかく片言でも日本語がしゃべれるのだから、家に、日本人サラリーマンやそのカミさんたちを呼んで、お茶でもしながら、中国語を教え、ついでに上海家庭料理を教える、というのは、どうだ? きっと成功する。と、勝手に経営企画。
そのあいだ、おっちゃんは、厨房の奥だか休憩室だか。顔を出すことはなかった。そういえば、料理を運んできたときも、浮かない表情をしていた。
ビジネスチャンス広がる経済大躍進の中国に一日でも早く(もう遅いという噂もあるが)帰って、新しい展開に賭けるという決断は、どうやら、おばちゃん主導。おっちゃんは、今の店に未練が残っているらしい。それでメランコリーなのだろう。
店が終わるまでに、また来ますね、と言って、店を出た。
〔資料映像〕