かはほりのうねうね使ふ夜空かな 岩淵喜代子
岩淵喜代子第4句集『嘘のやう影のやう』(東京四季出版2008年2月)より
飛ぶものはいろいろあるが、蝙蝠は、独特の存在だ。壁や木の枝ににぺたっととまっていたかと思うと(細かく震えていたり、揺れていたりするんです)、中空へ飛んでいく。羽ばたき方は、鳥とはあきらかに違う。空もまた、つまり蝙蝠の飛ぶ空もまた、特別なものとなる。夕暮にしても、夜にしても、それまで知っている空とは、どこか違うのだ。
ほか何句か。
顔洗ふ水に目覚めて卒業子
豪華船遅日の風に運ばるる
月明の色をさがせばかたつむり
雫する水着絞れば小鳥ほど
軽妙で、それでいてきりっとしてして、みずみずしい肌理。そんな句集。