スクラップって愉しいんですよね。今はもっぱらネットでニュースを読むんですが、昔は、シノギと個人的楽しみの両方で新聞や雑誌を切り抜いてました。
スクラップ専用カッターナイフとか、買ったりして(あまり使わなかったけれど)。
新聞に切抜きの穴うぐひす鳴く 上田信治
週刊俳句・
第40号(2008年1月27日)「文鳥」10句より
切り抜きの穴、この句の場合は、やはり新聞をかざして、穴から向こうが見えるようにしたい。庭とかが見えてね、うぐいすの鳴き声をその穴から聞く…と、あえて下世話に季語を関連づけたい。「うぐいす鳴く」を、俳句的に分離(切れ)して読むよりも、そのほうが有り体なくて、おもしろいんです。
「新聞に」の「に」という部分、切り抜いたのは、作者(句の一人称)ではないような気がします。そうすると、穴とうぐいすの声に向き合った作者が、なんとも受動的で怠惰で情けなくて、いいですね。この人、無表情に口があいていそうです。ぽか~んと。
それにしても、この「文鳥」10句は、人を食ったような部分が随所にあって、おもしろい。
そして大好きな表題作。
文鳥は温し牡蠣フライは熱し 信治
左手に文鳥をもちつつ、右手でアツアツの牡蠣フライをつまんで口へ…(と、これもあえて具体的に、そのままの景色として読む)。なんとややこしい、なんと不思議なことを! このひと、そうとうヘンです。
〓blogランキングを見る〓