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俳句漫遊記122 ヘン

スクラップって愉しいんですよね。今はもっぱらネットでニュースを読むんですが、昔は、シノギと個人的楽しみの両方で新聞や雑誌を切り抜いてました。スクラップ専用カッターナイフとか、買ったりして(あまり使わなかったけれど)。

  新聞に切抜きの穴うぐひす鳴く  上田信治

週刊俳句・第40号(2008年1月27日)「文鳥」10句より

切り抜きの穴、この句の場合は、やはり新聞をかざして、穴から向こうが見えるようにしたい。庭とかが見えてね、うぐいすの鳴き声をその穴から聞く…と、あえて下世話に季語を関連づけたい。「うぐいす鳴く」を、俳句的に分離(切れ)して読むよりも、そのほうが有り体なくて、おもしろいんです。

「新聞に」の「に」という部分、切り抜いたのは、作者(句の一人称)ではないような気がします。そうすると、穴とうぐいすの声に向き合った作者が、なんとも受動的で怠惰で情けなくて、いいですね。この人、無表情に口があいていそうです。ぽか~んと。

それにしても、この「文鳥」10句は、人を食ったような部分が随所にあって、おもしろい。

そして大好きな表題作。

  文鳥は温し牡蠣フライは熱し  信治

左手に文鳥をもちつつ、右手でアツアツの牡蠣フライをつまんで口へ…(と、これもあえて具体的に、そのままの景色として読む)。なんとややこしい、なんと不思議なことを! このひと、そうとうヘンです。



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by tenki00 | 2008-02-18 23:57 | haiku-manyuuki
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