雪我狂流(ゆきが・ふる)さんが俳人になる前の話。アダモと呼ばれていた頃の話だ。なんだかヘンテコなオーラを放ちながら自転車に乗って国立大学通りをやってくる人がいる。見るとアダモさんだ。小さなラジカセがハンドルからぶらさがっている。鳴っているのは Modern Lovers。
ウォークマンの発売は1979年。その直後くらいの時期だが、買っているはずはなかった。ラジカセの小さなスピーカーから、ジョナサン・リッチマンのもっこりとした声と、いやに粘っこいバンドの音が、ミディアムのヴォリュームで流れていた。 逸脱。 いろいろな意味の逸脱を体現していたのがアダモさんだった。 アルタナティブ(もっと違う何か)を体現していたのもアダモさんだった。 アダモさんは俳句によって「普通」を取り戻し、この世の「退屈」を取り込み、「社会」に復帰して、雪我狂流さんとなった。不思議な脱力感やキュートさをまとった狂流さんの句は、逸脱から出発しているだけにモノが違う。 逸脱を知らず、ずるずるの世間に暮らし、「俳句はおもしろいから」と手習った句とはワケが違う。 「俳句は、つまんないもの、おもしろいものじゃない」と言い切る狂流さんの句のオツさ加減。それは出自としてもつ逸脱を抜きにできない。 俳句が結果としてどのような挙措をとるにしても、「逸脱」ということと無縁ではつまらない。 普通の人が世間とべったりなまま暮らすなかから言葉を発する? そんな必要などまったくない。句など捻らず、普通に暮らし続けるほうがよほどよい。 と言ってしまったあと、私は句を捻ることができるのか? 捻るとしたら、どんなふうに? ゆっくり考えてみることにする。 Modern Lovers; Modern Lovers 1972
by tenki00
| 2007-01-12 22:10
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