俳句漫遊記91 齋藤朝比古 

ピンホールカメラの前の白牡丹  朝比古

前エントリからの続きのような俳句漫遊記。俳句研究賞受賞作「懸垂」50句より。「懸垂」には好きな句がたくさんあるが、なかでもこの句を挙げたい。

目に見えない白牡丹の震えまで見えるようだ。それから湿度や軽度明度や。かすかなアニミズムも感じる。的確な写生観とあっさりとした句の仕上がりが朝比古さんの作風だ。それを思えば、この句は、ちょっと異色かも。

ピンホールカメラも白牡丹も、実際には見ちゃいない。賭けてもいいが、アタマの中で作った句。でも、そんなことはまったく問題ではない。

50句のなかには他にもう1句、カメラの句がある。「戦場のカメラ毛布に包まるる」。選者のひとり、中原道夫がこうしたカメラの句に反応している。この2句を読んだ人は、朝比古さんに、古い銀塩カメラの趣味があるのかと思うかもしれない。これも賭けてもいいが、そんな趣味はないと思う。趣味は俳句だけに決まっている(独断)。

さて、掲句に話を戻す。艶やかで、清新にスタイリッシュな句だ。こういう句をこれからたくさん読ませていただけるのだと期待してしまう。

タイトル句(懸垂の句)が多くの好感をもって受け入れられることは察しがつく。もちろん良い句だが、「思い出俳句」と思う。思い出句は、共感や好感を集めやすい。懸垂の句は、これまでの朝比古俳句の一部ではあろうが、これからは、そこからさらに先に行っていただきたい、というのが、かなり古くからの朝比古ファンである私の願いだ。

そして、これからの朝比古俳句のひとつの方向に含まれるのが、掲句だと思う。

***

さて、余談を少しだけ。俳句研究賞の応募を見ると、応募総数は296篇。ちょっとびっくりしたのは、60代86名、70代以上51名。実に46%が60歳以上なのだ。別に高齢者が応募するのがどうと言うのではないが、俳句研究賞って(角川俳句賞もそうだが)、(俳壇の)新人賞でしょ?じゃないの? なんか変。ちなみに、49歳以下は67名で全体の23%弱。平均年齢57歳。ううむ、なんか変。比較的若い朝比古さんが獲ってよかったね。

全体は以上のとおりだが、予選通過の26名は40代、50代が中心。それでも最高齢はなんと82歳(大正13年生まれ)。ちなみに最年少は38歳。

戦後60年、俳句は、俳句まるごと、ずいぶんと年寄りになってしまったということだ。
[PR]
by tenki00 | 2006-10-17 22:45 | haiku-manyuuki
<< 俳句漫遊記92 村田篠  『俳句研究』定価790円 >>