俳句漫遊記85 エリック?

エリックのばかばかばかと桜降る  太田うさぎ

エリックって誰?

とりあえず恋歌と読む。「ばかばかばか」と囃しているのでは断じてなく、「ばかばかばか」と胸を叩いている。コケティッシュな女性(あるいは男性)の挙措。ここで現実の作者像と結びつける必要はない。ともかく、そんなシーン。エリックの胸はそれほど厚くない。シャツの襟ぐりからはみ出すほどの胸毛でもない。それは、桜の降るようなこと、というか、桜が降ることそのものなのだろう(このあたりの論旨は自覚的迷走の手法。どんな手法だ?)。

そのものであることで、だか、なんだか、句は、先に私がほざいたようなドラマから逃れる。意味から逃れ、印象から逃れ、表層だけをあらわにする。

エリックとは、エリック・ドルフィーでも、エリック・ロメールでも、E.H.エリックでもない。誰かを連想してはいけない。エリックはただの名前であった。ただの4音であった。桜は? 桜はただ降るのみ。ワンダフルな表層俳句(*)ざんす。

掲句は『豆の木第10号』(2006)所収。

(*)表層俳句については旧ブログのこの↓記事を参照。http://sky.ap.teacup.com/tenki/112.html
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by tenki00 | 2006-07-22 23:42 | haiku-manyuuki
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