俳句漫遊記79 懐かしいモダン

ピストルがプールの硬き面に響き  誓子

本を探していて、それが出てこず、『自選自解 山口誓子句集』(白鳳社1969)が出てきた。そういえば、むかし古本屋で買ったのだった。1頁に1句、そこに自解が付く。「自解」を読んで、どうというより、自選215句という造りが、こっちにとっては便利。

昔の句は、その句そのものとしての価値とは別に、その時代の空気のようなものがふわっと匂ってくることがある。「時代の空気」とは、ときに「懐かしいモダン」だったりもする。で、私は、この懐かしくモダンな句に弱い。小説などでも味わえるものだが、俳句だと、飴をひとつぶ口に入れるような軽さと速度で、この手の愉しさが味わえる。

扇風器大き翼をやすめたり  誓子

重大なことがそこに詰まっている必要なんてない。ああ、こういう感じ、ね、こういう空気、ね。その手の感興が最も悦ばしい。

ピストル~は昭和11年作・『炎昼』所載、扇風器~は昭和4年作・『凍港』所載。
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by tenki00 | 2006-05-30 23:40 | haiku-manyuuki
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