俳句漫遊記76 八田木枯

汗の馬芒のなかに鏡なす  八田木枯

『汗馬楽鈔』(深夜叢書社1988)には22歳から約10年の句が収められている。つまり20代の作品集。

白壁やとべば小鳥は空の中  八田木枯
熱さめて虹のうぶ毛のよく見ゆる  〃

いいなあ。なんとも。

『夜さり』(角川書店2004)の評判を聞き、これを読み、古本で『汗馬楽鈔』を手に入れ、それから『天袋』(『夜さり』のひとつ前の句集)と、3冊を読んだ。上に挙げた句は、『夜さり』との連続性を感じたが、面食らう句も多い。「愛」「妻」「恋」「自慰」「抱く」…。『汗馬楽鈔』には、その手のモチーフの句が多いことに驚く。20代、というよりもむしろ時代的なものかもしれない。作者の22歳は昭和22年。昭和20年代の俳句の状況を、不勉強につき知悉しないが、俳句の中に「我」や「情感」、さらには「詩性」がどう定位されるのかが、今とはずいぶん違っていたはずで、むかし、といってもほんの30~40年前、俳句は、なにかを為そうとする強度の強さのようなものが、今よりずっとたくさんあったのかもしれない。

『天袋』『夜さり』の句は、また別の機会に。
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by tenki00 | 2006-05-05 18:00 | haiku-manyuuki
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