香山リカ『いまどきの「常識」』

昨今の主流論調に疑義を唱えた本。「いまどきの常識」…章タイトル:「自分の周りはバカばかり」「お金は万能」「男女平等は国を滅ぼす」「痛い目にあうのは『自己責任』」「テレビで言っていたから正しい」「国を愛さなければ国民にあらず」…に、そうじゃないだろうが!と言っているわけで、スタンスは真っ当、論理もまずまず。ところが、なんか腰が退けている。「~ではないだろうか」といった文末が多いせいばかりではないだろう。

いわゆる「右寄り」の言説は声がでかい。それが一過性の風潮ではなく、かなり長いこと続いている。中庸は、右から見れば左、左から見れば右に見える。右やら左やら、端っこに針の振れた歪やら下品を受け入れることのできない「真っ当な中庸」は、どうしても声が小さくなるのかもしれない。とは、善意に解釈しすぎか。

この人はテレビで見たことがあったが、本を読むのは初めて。テレビではテキトーにコメントしていればいいが、「著者」ともなれば、1冊分、主役である。もうすこし啖呵を切ってくれるのかと思ったが、その点では期待はずれ。ケンカ売れないなら、こんな本、出すべきでないとも言える。さらっと読める薄さだが、半面、「時流としての常識」をもっとじっくりしっかり切り崩す叙述も欲しい。

(岩波新書2005年9月)
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by tenki00 | 2005-11-01 00:08 | pastime
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