金沢 その3 加賀国

金沢にはそんなにたくさん行っているわけではないが、yuki氏と私には、お決まりの行動がいくつかある。近江町市場を歩き、気が向いたら魚を注文する。店は忠村水産と決まっている。理由は「モノがいい」と聞いているから。別の店で、という気は二人とも起こらない。

近江町市場近くの順風堂で九谷焼を買う。二人とも九谷焼がお気に入りだが、ごてっとしたものは好まない。この店には、ごてっとしていないお好みの柄が多く、手頃な値段のものも多い。今回は茶碗を買った。

その近くの味噌屋・中六商店で味噌を買う。味噌は、金沢のここ、角館の安藤醸造元、信州味噌は山吹味噌などを好いている。こう言うと、グルメ(大笑)みたいだが、そんなことは全然ない。でも、そこらのスーパーで味噌を買ったりしない。yuki氏のえらいところだ。

和菓子の森八にも行くことがあるが、自分たちが食べるのに買うことはほとんどない。ここは歳暮・中元にたまに使う。だから寄るという程度。シノギの関係で出版社にも贈ることがあるが、私はノータッチで、それもyuki氏の担当である。「そういうとこは、いろんなところからいろんなものを贈ってくるはずだから、めったなものはできない」とyuki氏は言い、年に二度、品物を選ぶ。森八はそういう基準に耐えるブランドらしい。酔っぱらってるだけではない。意外にきちんとしている。yuki氏のえらいところだ。

こんなふうに、金沢への旅は決めごとで組み立てられた部分の多い旅なのだが、今回、足を伸ばす場所に新味を出した。二日目、墓参を終えてからの午後、義父らと別になり、二人でどこに行こうかという話になって、能登は何度か行ったし、もういい、で、加賀市に行くことにした。以前に、歌仙をご一緒したおるかさんがお住まいの町と知っていたので、加賀市という名前が浮かんだのだと思う。

北陸自動車道を走ると、すぐに加賀市に着いた。途中、美川町というところがあって、道の脇に「美川 県一の町」と描いた巨大な看板が立っている。ダジャレ? だいじょうぶか、美川町。

行ってみてわかったのだが、加賀市というのは合併後の新しい地名のようだ。加賀という駅があるのだと思っていたが、なくて、大聖寺が古くからの地名らしい。駅前にクルマを停めて、渋い駅舎に入り、観光局発行のパンフを入手。ふむふむと眺め、九谷焼美術館というものがあるとわかり、出かける。綺麗な建物だ。田舎の公共施設にありがちなゴテゴテ感、トンデモデザインとは遠い。趣味のいい建造物。展示物はあっけないほど少ないが、全部観ても疲れないから良い。喫茶室のあるスペースには現代作家の焼き物が飾ってある。おるかさんのものを見つけた。おお!という感じ。理由もなく、なんだか嬉しい。yuki氏に、「これ、俳句の知り合い」と告げると、「へえー」と答えて、ケータイでパシャリ。旅のスーヴェニール。か。

美術館を出ると、道を隔てた向かいに「おしゃれショップ」という看板。ただの洋品店とわかっていても、二人とも、そのネーミングを目の前にすると、心を捉えられ、入らないわけにはいかなくなった。果たして、ただの洋品店で、オトボケアイテムがあるわけでもなく、ツッコミようがない。ううむ、二人して、困った。

下道をすこし走り、それから北陸自動車道を金沢へ。下道を走っているあいだ、美しい稲田が目に入った。稲田は、どこで見ても美しい。むかし、コメの自由化について世の中、侃侃諤諤やっていた頃(タイ米がどうのこうのと騒いだ頃だ)、井上ひさしが、コメ自由化は、稲田の風景を失うことに繋がると書いていたことを思い出す。ブンガク的にまわりくどい反対表明だが、実感として首肯。稲田の風景は、ほんとうに美しい。

3日目、金沢にもう一泊する義父と義母を残して、帰りは、行きとは違う経路で、北陸自動車道へ。急に雨が土砂降ったり、やんだり。これが北陸の天候なのだろうか。こういうシメで終わる旅も良いと思った。
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by tenki00 | 2005-08-26 01:27 | pastime
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