長男

ご承知のとおり、世の中には、〔わからない+おもしろい〕俳句がたくさんあるのですが〔*〕、大石雄鬼さんは、その手の良質な句を量産できる数少ない俳人のひとり。

  水澄んで段差になつてをりし父  大石雄鬼

  長男の割箸めいてゐる湯ざめ  同

『豆の木』第16号(2012年4月21日)所収の「長男」10句の家族句より2句。

人というのは、よく見てみると、またじっと考えてみると、このように不思議な肌理をもった存在なのかもしれません。これと言葉ではっきり言えないような。

これと言葉ではっきり伝えられるようなことは、俳句の領分ではない、という明確なスタンスというか立場が、大石さんにはあるようです。

  空気清浄機の岩めいて鶴来たり  同

  するめいかの奥の明るし原爆忌  同

かと思うと、次のような、ちょっと毛色の違う不思議さも、私には魅力です。

  バックルの大きな男海胆を食ふ  同


ところで、大石さんは1958年生まれ。50歳代は若手とも言えず、そのせいもあって、このところ流行りのアンソロジーに入ることもない。句集もまだ出ていないので、『俳コレ』(2011年・週刊俳句編・邑書林)に入集されてよかったんじゃないかと、今になって思っていますが、洩らしたのは私の責任も少しあるかな、と。


〔*〕 言うまでもありませんが、この世の中、〔(意味の)わかる・つまらない(退屈な)〕句が、圧倒的多数を占めるわけです。下図で言うと、D、ね。

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by tenki00 | 2012-05-15 20:00 | haiku-manyuuki
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