みどり

『豆の木』第16号(2012年4月21日)より。

  川よりもゆっくり歩く緑雨なり  室田洋子

川の流れはどんなにお遅くても人間の歩みよりは早いだろう。「川よりもゆっくり」とわざわざ言うのは、気持ちの問題。

すぐ近くに水の流れがあって、おまけに雨。この水だらけの世界の主成分は「緑」。この句全体が緑、濡れた緑。その緑が歩みの速度を包み込むと、緑自体にも少し動きが出る。そこが心地よい。

その心地よさが「緑雨なり」の「なり」で、詠み手/読み手に引き寄せられる感じもありますよね。「緑雨かな」だと記述が雨に向かい、快感も雨に委ねられる。それもいいのだけれど、この作者は、「なり」で、自分へと快感を引き寄せる。そこに遠近法が出る。となると、もう静止画ではなく、動画。緑がいきいきと動くのでありますよ。

立夏(5月5日)は、もう、すぐ。


[PR]
by tenki00 | 2012-05-02 20:00 | haiku-manyuuki
<< 勝新の映画『顔役』 質感 >>