映画勝負・第3番 普通の人々


ビン・ラディンを探せ!~スパーロックがテロ最前線に突撃! (モーガン・スパーロック監督/2008年制作)

右 勝
ザカリーに捧ぐ (Kurt Kuenne監督/2008年)

「松嶋×町山 未公開映画を観るTV」で放映されたドキュメタリー。注目度・人気度が高かったがTVで見逃し、DVDでレンタル。その2本が同時に届いた。

「ビン・ラディンを探せ!」は、ビン・ラディンなんかを野放しにしていては、生まれてくる息子もアメリカでおちおち暮らしていられない、ということで、監督みずから、ビン・ラディンを探しに出かける。ビン・ラディンがすでに殺害された今、これを見るのは、その前とはちょっと違う気持ちが湧く可能性もあるが、それはそれとして、現地(アフガニスタンやらサウジやらパキスタンやら)で取材するにつけ、そこに住んでいるのは、普通の人々だという、予定的と言えば予定的な結末。アメリカにとっての「イスラム=テロリスト」「イスラム=異教徒=見も知らぬ文化」という思い込みの相対化。

テンポや映画としてのまとめ方が良くて、気持ちがいい。サウジアラビアが、北朝鮮か?と思うほど情報統制のきつい国であることが映像で直にわかる点も興味深かった。

「ザカリーに捧ぐ」は、青年医師がペンシルヴァニアの駐車場で殺害されるのですが、彼には息子(胎内)がいることが判明。その息子の母親は…と、これ以上書けない。いわゆるネタバレは、この映画にとって致命的。ドキュメンタリーだが、その展開は、生半可なフィクションよりもずっとドラマチック。「えーっ!」という凄い展開が何度もある。よく「衝撃の事実!」という惹句を使うが、まさにそれ。

2本とも、普通の人々、庶民の本性、普通の暮らしのかけがえのなさみたいなものがテーマだが、「ビン・ラディンを探せ!」が楽観的にまとまる(だから、観た後の気分はいい、爽快感がある)のに対して、「ザカリーに捧ぐ」は、悪魔性は普通の人々の中にあるんだね、という、なんだかとても重いものが伝わる。最後は美談めき、ポジティブに終わろうとはするものの、たくさんの普通の善良な人々よりむしろ、その中にまじった一人の殺人者、その邪悪さのほうに、目が向いてしまう。

それは、ビン・ラディンよりもアラブ社会に暮らす多数の庶民に気持ちが向かう「ビン・ラディンを探せ!」とは対照的。

どちらもおもしろいが、オススメは、「ザカリーに捧ぐ」。


[PR]
by tenki00 | 2012-02-03 20:00 | pastime
<< 映画勝負・第4番 トム・クルーズ 聞き比べ goodbye girl >>