コレラ

以前、東京都の伝染病だか細菌だかの研究施設に、ちょっとした用で行ったことがある。木造建てでちょっと蔦がからまっていたりして(ここは記憶の脚色かもしれぬ)、えらく雰囲気のある建物だった。廊下を抜けて、部屋を抜けて、すると、そのへんの棚に置かれたガラス瓶に、コレラ菌だとかナントカ菌だとかと書いた紙ラベルが貼ってある。ことばの威力はすごいもので、病原菌の名前を見ているだけで、アタマがぼーとしてきて、体温が上がっていくような気がした。

  コレラコレラと回廊を声はしる  青山茂根

回廊だから、どこかへ抜けていくことはない。永遠のようなものだ。声が「はしる」という言い方にも、なかなかな迫力がある。読んでいる者が不穏な気分になるのみならず、世界に事件が起きそうですよね。


掲句は『BABYLON』(2011年8月・ふらんす堂)より。ほかに何句か。

  いはれなくてもあれはおほかみの匂ひ

  いつせいに星を廻せる鯨かな

  塔あらば千の虫籠吊るしたし

  鶯を入れて苔むす景色かな


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by tenki00 | 2011-09-26 22:00 | haiku-manyuuki
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