何かを食べたいと思ったり、食べてみたら美味しかったり、と、そんなことが幸せだったり、大事だったりする。幸せのハードル、どこまで下げるんだ?ということもあるんですが。
歯磨きのあとの食欲ちちろ虫 関根誠子
寝るまえに食べちゃダメとわかっていても、ね。禁忌(タブー)へと心が動くこと。禁忌のハードルも低いなあ、と呆れられても、日々の暮らしで、そんなにドラマティックな禁忌破りがあるわけじゃない。
ちょっとした欲望、ちょっとした罪悪。
掲句は句集『浮力』(2011年・文學の森)より。他に何句か。
上階もおんなじ間取り夕焼くる
地に届く途中の雪を見てご飯
頬杖や街が勝手に夏になる
ちょっとかなしい浮遊感。
春の月未来は信じねばならず
この句は切実に胸に響きます。信じるしかないんです、じつに。
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