≫神野紗希 木曜日と冷蔵庫 俳句にまつわる女性性の問題
≫五十嵐秀彦 女性性の問題? 無門日記 ● 神野さんの記事のモヤモヤへの指摘は、五十嵐さんの記事で十全。 (いままったく関係のないことを思った。俳句では「下の名前」で呼ぶのが一般的だったはずなのに、その伝統は薄らいでいる。私も「紗希さん」「秀彦さん」と書かなかった) ひとつには、称揚したいものがまずあって、その露払いとして、批評の対象(今回は『超新撰21』の諸作品があるという作りに読めてしまうところ、同時に、批評対象へのマイナス評価のために、過去の句を対照させていると受け取れてしまうところが、紗希さんの記事の狡さ。それはそれでいいが、女性性の現れ方(表現?)の「称揚すべき」とされる昭和30年代生まれ女性作者の、どの句もピンとこない私などは、最後まで読んで「ありゃま。で、これかいな」ということにも。 ● もうひとつには、『新撰21』や『超新撰21』といったアンソロジーが、ないはずの文脈や関連を呼び寄せてしまうのかもしれない、ということ。これは最近ちょっと強く思っている。 例えば、(上記・神野さん記事に沿えば)、柴田千晶さんと小沢麻結さんとが並置されて論じられることは、おそらく『超新撰21』がなかったら、なかっただろう。それはそれでいいが、「同じ本に入っている」「どちらも女性作者である」という以外に、並置する根拠や必然性があるのかというと、どうも、そのへん薄い。 アンソロジーが批評において入集複数作者の並置を招くというのは、いっけん自然なことのようでいて、ちょっと考えてみると、そうでもない。 ヘンなたとえかもしれないが、日本文学全集の第56巻の作家と第57巻の作家とは、並置され関連づけて読まれることに意味があるかもしれないし、ないかもしれない。 ● 一方、 ≫外山一機 「ファリック・マザー」の系譜―種田スガルの俳句について …のような、作者をクライアント(患者・被験者)として扱うかのような「分析」もあります。こうなると、俳句というテクストは、文芸の脈絡よりも、告白の様相を帯びる(演じるという層を見出すにせよ)。 文芸作品そのものよりも、それを批評の枠組みにはめ込むことに興趣を感じるタイプの人には、こうしたとらえ方がおもしろいのかもしれません。 いわば、批評のための作品? 批評に供する作品? これって倒錯、と私などは思ってしまう。まず作品があると思うので。例えばファリック・マザーの存在が読み取れることと、その文芸を読むおもしろさとは、まったく別の階(別のフロア)にあるとするタイプです。なにかの概念が見出せたとしても、それはそれで結構なことだが、だから作品がおもしろい、だからもっとおもしろくなる、ということにはならない。 ● 簡単に言えば、俳句には〔私=女性〕がはっきりとわかる書き方(詠み方)がたしかにあって、そこは例によって男女非対称。「俳句における〔男性性〕の問題」なんて論考は、あるのだろうけど(可能なのだろうけど)、あまり目にしない気がする。 で、『超新撰21』には、〔私=女性〕が、ある種典型的に「性的な」現れる作家が明確に見出せて(種田スガル、柴田千晶)、このあたりをさして〔私性〕の表現が「ナイーヴ」と指摘する人がいるのだろう(例:湊圭史さん) 「私性」の表現に関して、ナイーブな表現者が多いのが意外な気がした。特に、女性作家の演技や誇張も含めた自己開示の傾向は、正直言って古臭い印象をもった。俳句界で少し前に大西泰世氏の川柳がもてはやされたことがあったようだし、昨年は鈴木しづ子の俳句(「夏みかん酸っぱしいまさら純潔など」)がいまさらながら話題になったような気もする。「私」の表現に関しては、俳句のほうが素朴な表現にまだ驚く向きがまだ残っていそうである。● まったくの好みの問題を言ってもしかたがないが、いわゆる「女性らしい俳句」というのが、私自身はおおむね苦手で、だから、あまり良い読者ではない。 女性俳句における性的な身ぶりよりも、コケトリな身ぶりのほうに、このところ興味があるので(そのほうがむしろバリバリにオヤジ的な読み、それこそファリッックな読みかも)、よくある俳句と「女性性」の論議からは、ちょっと離れたところにいる感。 だから、これは、メモ的扱い。(のわりに長い。資料的まとめ、と呼んでいただいてさしつかえない) ● で、最後の補足が、自分にとっていちばん重要だったりするのですが、私、東京事変のアルバム、大好き。それはバンドの音がいいから(アレンジや演奏ね)。 それに乗っかるボーカリスト(椎名林檎)の歌唱もいい。でも、その「女性性」うんぬんについてはよくわかりません。 ところが、東京事変が好き、と言うとき、「バンドの音が」という但し書きをつけないといけないようで、すごく邪魔くさい。それもこれも、椎名林檎にまつわる「セクシャルな意味」のせい。 ● しかし、長いな。メモってわりに。 ● ● ●
by tenki00
| 2011-01-26 19:30
| haiku
|
最新の記事
LINKAGE
カテゴリ
全体 haiku ameo & tenki haiku-manyuuki tenki-ku pastime kasen hai-zukan sampo haiku no fushigi memo etc book 未分類 以前の記事
2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 09月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 2006年 09月 2006年 08月 2006年 07月 2006年 06月 2006年 05月 2006年 04月 2006年 03月 2006年 02月 2006年 01月 2005年 12月 2005年 11月 2005年 10月 2005年 09月 2005年 08月 2005年 07月 2005年 06月 2005年 05月 2005年 04月 最新のトラックバック
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||