ハシモト君

19歳のときだ。荻窪あたりのハシモト君の下宿に友だちと連れだって遊びに行った。

夜になって、チャーハンかなにかをハシモト君がつくってくれた。

ん? なんか味にムラがある。調味料がダマになってるのかもしれない。

混ぜ方が足りないのだろうと、友だちが言うと、ハシモノ君は、「ああ、なにもわかってないな」という微笑みを顔に湛えながら言った(外国人が、人差し指を顔の前で左右に振りながら、ツツツツと声にするときの表情だ)。

「料理は、あまり混ぜないほうがいいのだ。味にムラがあったほうが、いろんな味が楽しめるから」

なるほど、味が薄いところや、濃いところ、しょっぱめのところや、味気ないところ。いろんな味がする。

「混ぜたら、一種類の味しか味わえないだろう?」

ハシモト君のその晩のひとことは、私の胸に深く刻まれ、以来、万事、その言葉のごとく考えようと決心したのでした。




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by tenki00 | 2010-12-22 00:12 | pastime
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